症例報告

胆嚢hepatoid adenocarcinomaの1例

中正　恵二¹　　　山根木康嗣¹　　　大山　秀樹¹
平野　博嗣¹　　　山田　直子¹　　　秦　　正樹¹
寺田　信行¹　　　岡田　敏弘²　　　斎藤　慎一²
藤元　治朗²

(¹兵庫医科大学病理学講座，²同　外科学講座)

要旨: 胆嚢原発のHepatoid adenocarcinoma（HAC）は極めてまれである。α-fetoprotein 陰性のHACの症例を経験したので報告する。【症例】80歳代の女性。胆嚢癌の診断のもと胆嚢摘出術を受けた。胆嚢頸体部に結節浸潤型増生を示す3.5×4.5 cmの腫瘍を認めた。腫瘍は分化型腺癌（tub）成分に加えて，肝細胞癌（HCC）類似の癌成分から構成されていた。
免疫組織化学で本例HACは，ほぼ全域でCK7（+)，CK19（+）を示した。tub成分はMUC1（+)，CA19-9（+)，CD10（−）を示し，HCC類似癌成分への移行部およびHCC類似癌成分内に散在するtub成分ではhepatocyte paraffine-1 (Hep Par 1)（+）であった。HCC類似癌成分はHep Par 1（+）に加えてcanalicular patternのCD10（+）であったが，その発現態度は不規則かつ不均一であった。
以上の結果から本例HACは，腺癌として発生し，浸潤増生する過程でHCC類似の形態や形質を獲得したと推測された。

キーワード: gallbladder, hepatoid adenocarcinoma, hepatocyte paraffin-1, cytokeratin, mucin

A case of hepatoid adenocarcinoma of the gallbladder

Keiji Nakasho¹, Koji Yamanegi¹, Hideki Ohyama¹, Hiroshi Hirano¹, Naoko Yamada¹, Masaki Hata¹, Nobuyuki Terada¹, Toshihiro Okada², Shinichi Saitoh², and Jiro Fujimoto²

Departments of ¹Pathology and ²Surgery, Hyogo College of Medicine

(論文受付 2007年12月20日)

(採用決定 2008年 7月 4日)