症例報告

下咽頭混合型小細胞癌の1例

井上　理恵¹　　　松林　　純¹　　　伊藤　博之²
鈴木　　衞²　　　向井　　清¹

(¹東京医科大学病理診断学講座，²同　耳鼻咽喉科学講座)

要旨: 混合型小細胞癌の大半は肺にみられ下咽頭に発生する例は稀である。今回，免疫組織化学的に神経内分泌系および間葉系マーカーなどを発現した下咽頭混合型小細胞癌の1例を経験したので報告する。症例は80歳，男性で，全経過は4ケ月であった。咽頭痛を主訴に受診。喉頭鏡にて下咽頭腫瘤を指摘され，咽頭喉頭切除術を施行された。手術標本で，高分化扁平上皮癌と小細胞癌からなる混合型小細胞癌と診断した。小細胞癌の一部は，免疫染色でビメンチンやデスミンの発現がみられたが，サイトケラチンやE-カドヘリンの発現はみられなかった。

キーワード: hypopharynx, combined small cell carcinoma, desmin, divergent differentiation, epithelial-mesenchymal transition (EMT)

A case of combined small cell carcinoma of the hypopharynx

Rie Inoue¹, Jun Matsubayashi¹, Hiroyuki Itoh², Mamoru Suzuki², and Kiyoshi Mukai¹

Departments of ¹Diagnostic Pathology and ²Otolaryngology, Tokyo Medical University

(論文受付 2008年4月23日)

(採用決定 2008年6月26日)