症例報告

淡明細胞腺癌との鑑別に苦慮した妊婦の子宮内膜ポリープの1例

渡辺　次郎¹　　　佐藤　　圭¹　　　松本　聡美¹
伊知地盛夫²　　　大蔵　尚文²　　　島尻　正平³

(¹国立小倉病院臨床検査科，²同　産婦人科，³産業医科大学病院病理部)

要旨: 今回，淡明細胞腺癌との鑑別に難渋した妊婦にみられた子宮内膜ポリープの1例を経験した。症例は41歳の経産婦。妊娠を契機に来院し，内膜ポリープが指摘された。苦慮したのは，妊娠反応に伴う上皮の異型に加えて，良悪性の判別のために行ったKi-67とP53の染色の偽陽性のためであった。妊娠期の子宮内膜にはビオチンを豊富に含有する核内封入体が出現することが知られている。このことから，ビオチンを用いた免疫染色をする際には非特異反応の可能性を考慮し十分注意することが必要である。

キーワード: Endometrial polyp, Biotin-containing intranuclear inclusion, Gestation

A case of endometrial polyp in pregnant woman resembling clear cell adenocarcinoma

Jiro Watanabe¹, Kei Satoh¹, Satomi Matsumoto¹, Morio Ijichi², Naofumi Ookura², and Shohei Simajiri³

Departments of ¹Clinical Research and ²Obstetrics and Gynecology, National Hospital Group Kokura Hospital
³Department of Surgical Pathology, University of Occupational and Environmental Health

(論文受付 2008年2月 8日)

(採用決定 2008年5月27日)