総  説

肝臓原発の血管筋脂肪腫・PEComaの病理

野々村昭孝1   榎本 泰典1   武田麻衣子1
笠井 孝彦1   中峯 寛和1

(1奈良県立医科大学病理診断学講座)

要旨: 血管筋脂肪腫(AML)のほとんどは良性腫瘍であるが,いわゆる平滑筋成分の形態学的多様性や異型性からこれまでしばしば悪性腫瘍と誤診されてきた。最近になりAMLはperivascular epithelioid cell(PEC)由来の腫瘍で,PEComa familyに属する腫瘍とされている。AMLのいわゆる平滑筋細胞がPECとよばれる細胞であり,以前から平滑筋成分のみからなるAMLは悪性のpotentialのある腫瘍とされていた。最近では,平滑筋成分のみからなるこの種の腫瘍はPEComaとよばれている。本稿では病理診断に役立つAMLの組織学的spectrumを明らかにし,いわゆる平滑筋細胞(PEC)の細胞型や増生パターンについて述べ,AMLやPEComaの診断に有用な組織所見を述べるとともに,未だその起源が不明であるPECのnormal counterpartについても概説した。

キーワード: angiomyolipoma (AML), perivascular epithelioid cell (PEC), PEComam, HMB-45, pericyte


Pathology of angiomyolipoma and PEComa of the liver

Akitaka Nonomura1, Yasunori Emomoto1, Maiko Takeda1, Takahiko Kasai1, and Hirokazu Nakamine1

1Department of Diagnostic Pathology, Nara Medical University School of Medicine

(論文受付 2008年5月31日)

(採用決定 2008年7月 5日)