症例報告

胆嚢Mucin-producing papillary adenocarcinomaの1例

中正　恵二¹　　　覚野　綾子²　　　大山　秀樹¹
山根木康嗣¹　　　山田　直子¹　　　秦　　正樹¹
平野　博嗣¹　　　寺田　信行¹　　　相原　　司³
安井　智明³　　　山中　若樹³

(¹兵庫医科大学病理学第1講座，²明和病院病理検査科，³同　外科)

要旨: 症例は70代の女性。急激な心窩部痛を主訴に入院となり，急性無石胆嚢炎，胆嚢癌疑いの診断のもと胆嚢摘出術を受けた。胆嚢内は粘液が充満し，ゼリー状粘液塊が付着した8.0×4.0×1.0 cm大の扁平隆起状の腫瘍を認めた。組織学的に高度の粘液産生を伴う乳頭状腺癌像を呈していたことから，極めて稀な胆嚢粘液産生腫瘍（MPN）と考えた。さらに癌浸潤部の一部には粘液癌成分を認め，胆嚢MPNから粘液癌への進展を示唆する所見と考えた。
既報告の胆嚢MPNとの臨床病理学的比較検討を行うとともに膵Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm（IPMN）および胆管粘液産生腫瘍（IPM-B）との類似性を検討するためサイトケラチン（CK）およびムチン（Muc）の発現パターンについての免疫組織学的検討を行った。CK7，CK20，Muc1およびMuc2の発現に関する検討結果から，本例の胆嚢MPNは，腸型形質であるCK20とMuc2が陰性で，膵IPMNや胆管IPM-Bとは異なる発現パターンを示した。

キーワード: mucin-producing neoplasm, papillary adenocarcinoma, mucinous adenocarcinoma, cytokeratin, mucin profile, gallbladder

A case of mucin-producing papillary adenocarcinoma of the gallbladder

Keiji Nakasho¹, Ayako Kakuno², Hideki Ohyama¹, Koji Yamanegi¹, Naoko Yamada¹, Masaki Hata¹, Hiroshi Hirano¹, Nobuyuki Terada¹, Tsukasa Aihara³, Chiaki Yasui³, and Naoki Yamanaka³

¹Department of Pathology, Hyogo College of Medicine
²Division of Pathology and ³Department of Surgery, Meiwa Hospital

(論文受付 2007年11月27日)

(採用決定 2008年 3月11日)