症例報告

多発性肝転移を伴った胃原発AFP産生性肝様腺癌を含む
三重癌の1剖検例

大西　紘二¹　　　堀野　　敬²　　　木村　正美³
竹屋　元裕¹

(¹熊本大学大学院医学薬学研究部細胞病理学分野，²同　消化器外科学分野，
³健康保険人吉総合病院外科)

要旨: 比較的稀な胃原発肝様腺癌を伴う三重癌の1例を報告する。症例は62歳女性で，多発性肝腫瘍の精査目的で入院となった。生検の結果，肝腫瘍は原発性肝細胞癌，入院後に発見された胃腫瘍は管状腺癌と診断された。化学療法が行われたが奏功せず，腫瘍の進行により永眠された。剖検後の検索で，胃腫瘍は一部に管状腺癌を伴うAFP産生性肝様腺癌であり，肝腫瘍は胃癌の転移によるものであることが分かった。また甲状腺峡部に微小乳頭癌が認められ，3年前に切除された直腸癌と併せて，本例は三重癌の症例であった。

キーワード: stomach, hepatoid adenocarcinoma, alpha-fetoprotein-producing adenocarcinoma, triple cancers, autopsy case

An autopsy case of triple cancers including gastric AFP-producing hepatoid adenocarcinoma with multiple liver metastases

Koji Ohnishi¹, Takashi Horino², Masami Kimura³, and Motohiro Takeya¹

Departments of ¹Cell Pathology and ²Gastroenterological Surgery, Graduate School of Medical Sciences, Kumamoto University
³Surgery, Health Insurance Hitoyoshi General Hospital

(論文受付 2007年11月13日)

(採用決定 2008年 2月19日)