症例報告

扁桃周囲膿瘍の臨床診断で扁桃摘出術が施行された
伝染性単核球症の1例

棚橋　　仁¹　　　加島　健司¹　　　駄阿　　勉¹
近藤　能行¹　　　矢田　直美¹　　　森山　正臣²
鈴木　正志²　　　兒玉　雅明³　　　藤岡　利生³
横山　繁生¹

(¹大分大学医学部病理学講座第1，²同　耳鼻咽喉科学講座，³同　総合診療部・消化器内科)

要旨: 扁桃周囲膿瘍の疑いで緊急扁桃摘出術が施行された伝染性単核球症の1例を報告する。摘出扁桃は腫大し，組織学的にリンパ組織の基本構築は保たれていたが，濾胞間に無数の芽球様異型リンパ球の増殖を認めた。当初，悪性リンパ腫との鑑別に苦慮していたが，その後の検査成績と，異型リンパ球にEBER陽性所見を認めたことより，最終的に伝染性単核球症と診断した。伝染性単核球症は，悪性リンパ腫に似た組織像を呈する反応性疾患の一つであるが，臨床情報に乏しい状態では病理医が良悪の判定に苦慮する疾患と思われた。

キーワード: tonsil, infectious mononucleosis, Epstein-Barr virus (EBV)

A case of infectious mononucleosis performed tonsillectomy for the suspected peritonsillar abscess

Jin Tanahashi¹, Kenji Kashima¹, Tsutomu Daa¹, Yoshiyuki Kondo¹, Naomi Yada¹, Masaomi Moriyama², Masashi Suzuki², Masaaki Kodama³, Toshio Fujioka³, and Shigeo Yokoyama¹

¹Department of Pathology, ²Otorhinolaryngology, and ³General Medicine and Gastroenterology, Faculty of Medicine, Oita University

(論文受付 2007年 5月11日)

(採用決定 2007年 8月10日)