症例報告

粘液腫様変性の目立った上顎洞原発低悪性度鼻腔副鼻腔血管周皮腫様腫瘍
sinonasal hemangiopericytoma-like tumorの1例

工藤 和洋   下山 則彦

(市立函館病院中央検査部臨床病理科)

要旨: 70代女性。主訴は鼻閉感。右鼻腔入口部に易出血性腫瘤が認められ右上顎部分切除術を施行した。腫瘍は大きさ6.5×4.3×2.3 cmであった。異型を示す卵円形ないし紡錘形細胞が血管周囲で血管周皮腫様に配列しながら増生する所見が認められた。しかし,粘液腫様変性,炎症細胞浸潤が目立つ部分がほとんどであった。紡錘形細胞はα-SMA陽性,caldesmon陽性,S-100陰性,CD34陰性,ALK陰性であった。核分裂像は10高倍率視野中1個であった。腫瘍細胞に核異型が認められたこと,一部で壊死が認められたこと,腫瘍が大きいこと,MIB-1 indexが10%であったこと,再発を繰り返すことから低悪性度鼻腔副鼻腔血管周皮腫様腫瘍と診断した。塞栓術を行ったため粘液腫様変性,炎症細胞浸潤が目立ち,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍との鑑別が問題となった。

キーワード: sinonasal hemangiopericytoma-like tumor, perivascular myoma, maxillary sinus, low grade malignancy


A case of sinonsal hemangiopericytoma-like tumor with marked myxoid degeneration arising in the maxillary sinus

Kazuhiro Kudoh and Norihiko Shimoyama

Department of Clinical Pathology, Hakodate Municipal Hospital

(論文受付 2007年 8月17日)

(採用決定 2007年10月26日)