原　　著

卵巣癌における細胞周期関連タンパク質（PTEN, p27, p53, cyclin D1, cyclin E)
発現の免疫組織化学的検討

堀田　綾子¹　　　飯原久仁子²　　　坂本　穆彦¹

(¹杏林大学医学部病理学教室，²東京厚生年金病院病理科)

要旨: 卵巣癌における細胞周期関連タンパク質の一連の作用を究明する一助として，PI3K-Akt経路を負に制御しているPTEN（phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10）と，その下流に存在するp27, p53, cyclin D1, cyclin Eにつき，それらの発現状態や相互作用および予後との関係を免疫組織化学的手法を用いて検討した。PTENは組織型によって発現に差が認められ，類内膜腺癌の陽性率は38.1%で他の組織型に比べて低値であった。PTENとp27, p53, cyclin D1, cyclin Eの間では，発現状態に明らかな相関は認められなかった。Cyclin D1は明細胞腺癌以外の組織型において進行期のI, II期（p0.01）および組織学的悪性度のgrade 1 (p0.05）で高い陽性率を示し，cyclin D1の発現異常は卵巣癌発癌過程の早期に起こっている可能性が示唆された。Cyclin Eの発現はリンパ管侵襲と相関（p0.05）を示し，cyclin E陽性群は陰性群に比べ有意に予後不良（p0.001）であることから，卵巣癌の予後因子となり得ると考えられた。

キーワード: ovary, carcinoma, PTEN, cell cycle related protein, immunohistochemical study

Immunohistochemical study on cell cycle related proteins (PTEN, p27, p53, cyclin D1, cyclin E) of ovarian cancers

Ayako Horita¹, Kuniko Iihara², and Atsuhiko Sakamoto¹

¹Department of Pathology, Kyorin University School of Medicine
²Department of Pathology, Tokyo Kosei Nenkin Hospital

(論文受付 2007年 8月22日)

(採用決定 2007年11月 1日)