症例報告

初回時生検で確定診断に至ることが困難であった
ホジキンリンパ腫の1例

高田 尚良1   能勢聡一郎2   浜家 一雄2
市村 浩一1   田中 健大1   佐藤 康晴1
守都 敏晃1   吉野  正1

(1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理・病態学,2岡山済生会総合病院病理部)

要旨: 50代男性。発熱と表在リンパ節,深部リンパ節の腫脹を認め右鼠径部リンパ節生検を施行,このときの組織像では5%未満の領域に核小体が明瞭な非常に大型の異型細胞を認めた。免疫組織化学的にはCD30が陽性で,病変部が非常に謹少で,ホジキンリンパ腫で出現する背景病変などは認められず,CD30陽性の悪性リンパ腫の部分的な浸潤像と考えられた。しかし,材料を切り込んだところ病変部が全く消失してしまった。このため,確定診断には至らず,他のリンパ節の再検が必要であると回答した。その後,左鼠径部リンパ節生検からは結節硬化型ホジキンリンパ腫と診断できた。ホジキンリンパ腫は組織像が多彩且つ腫瘍細胞の分布が不均一であり,近くのリンパ節であっても組織像が相当に異なることがあり,注意を要すると考えられた。

キーワード: nodular sclerosis Hodgkin lymphoma, anaplastic large cell lymphoma, re-biopsy


A case of Hodgkin's lymphoma with difficult diagnosis

Katsuyoshi Takata1, Souichirou Nose2, Kazuo Hamaya2, Kouichi Ichimura1, Takehiro Tanaka1, Yasuharu Sato1, Toshiaki Morito1, and Tadashi Yoshino1

1Department of Pathology, Okayama University Graduate School of Medicine and Dencity
2Departments of Pathology, Okayama Saiseikai General Hospital

(論文受付 2007年 3月19日)

(採用決定 2007年 5月 7日)