症例報告

高度のリンパ球浸潤を伴った甲状腺明細胞型濾胞腺腫の1例

松山　篤二¹　　　久岡　正典¹　　　村上　敬一²
本郷　弘昭²　　　池上　克徳²　　　金光　秀一¹
橋本　　洋¹

(¹産業医科大学医学部第1病理，²山鹿市立病院外科)

要旨: 67歳女性の甲状腺に発生した高度のリンパ球浸潤を伴う稀な明細胞型濾胞腺腫の1例を報告する。境界明瞭な腫瘍内では，淡明で豊富な細胞質を有する濾胞上皮細胞が増殖しており，正常の濾胞上皮と同程度に好酸性の細胞も混在していた。脈管侵襲や被膜浸潤は認められなかった。間質には胚中心形成を伴う高度のリンパ球浸潤がみられた。非腫瘍部の甲状腺は橋本病とみなされたが，腫瘍内に比してリンパ球浸潤は軽度であることから，腫瘍内のリンパ球浸潤は単に橋本病に随伴した変化でなく本腫瘍に対する固有の反応であると考えられた。

キーワード: thyroid, follicular adenoma, clear cell, lymphoid stroma, Hashimoto's thyroiditis

A case of clear cell follicular adenoma of the thyroid with a lymphoid stroma

Atsuji Matsuyama¹, Masanori Hisaoka¹, Keiichi Murakami², Hiroaki Hongou², Katsunori Ikegami², Shuichi Kanemitsu¹, and Hiroshi Hashimoto¹

¹Department of Pathology and Oncology, School of Medicine, University of Occupational and Environmental Health
²Department of Surgery, Municipal Hospital of Yamaga

(論文受付 2007年 2月23日)

(採用決定 2007年 5月 7日)