症例報告

転移性脳腫瘍が疑われた成人トキソプラズマ脳症の1剖検例

神尾多喜浩

(済生会熊本病院中央検査センター病理)

要旨: 左同名半盲を主訴に生前転移性脳腫瘍と診断され，入退院を繰り返し加療されていた。しかし，剖検所見ではトキソプラズマ脳症やニューモシスティス肺炎，細菌性肺炎，種々の臓器へのサイトメガロウイルス感染を認め，AIDS（acquired immunodeficiency syndrome: 後天性免疫不全症候群）が疑われた。CT所見は転移性脳腫瘍と類似しており，病変が多発する場合には，AIDSも鑑別に挙げるべきである。

キーワード: brain, toxoplasmosis, adult, AIDS, autopsy

An autopsy case of toxoplasmic encephalopathy suspected metastatic brain tumor

Takihiro Kamio

Departments of Pathology, Saiseikai Kumamoto Hospital

(論文受付 2007年 2月23日)

(採用決定 2007年 6月13日)