症例報告

右腎動脈に高度の狭窄をきたし腎摘出術を行った
線維筋性異形成の1例

平田 公一   栗栖 義賢   辻   求

(大阪医科大学付属病院病院病理部)

要旨: 右腎動脈に高度狭窄,下大静脈に閉塞を認め,右腎摘出術を実施した線維筋性異形成の1例を経験したので,血管病変を中心に報告する。症例は5歳の男児で,意識障害を主訴に受診した。足背静脈からの血管造影では腸骨静脈分岐部から腎静脈分岐部にかけての下大静脈と,右腎実質・右腎動脈が描出されず,右腎動脈の完全閉塞が疑われ,右腎摘出術が実施された。摘出腎の重量は正常のそれよりも軽く,組織学的には腎門部の小動・静脈を中心に線維筋性異形成の像が認められた。また,腎実質内では一部の弓状動脈や小葉間動脈の壁の肥厚がみられ,内腔が狭窄していた。管内線維筋性異形成は本来筋性動脈の病変であるが,本例は動脈と静脈の両方に病変を認め,稀なものと考えられた。

キーワード: kidney, fibromuscular dysplasia, vein


A nephrectomy case of fibromuscular dysplasia of the kidney with right-renal aortic stenosis

Kouichi Hirata, Yoshitaka Kurisu, and Motomu Tsuji

Division of Surgical Pathology, Osaka Medical College Hospital

(論文受付 2006年11月30日)

(採用決定 2007年 2月16日)