症例報告

診断に苦慮した舌下腺原発adenocarcinoma,
not otherwise specifiedの1例

草深　公秀¹　　　瀧澤　義徳²　　　石木　寛人²
飯田　善幸²　　　海老原　充²　　　鬼塚　哲郎²
亀谷　　徹¹

(¹静岡県立静岡がんセンター病理診断科，²同　頭頸科)

要旨: 舌下腺に発生したadenocarcinoma not otherwise specified（以下，腺癌NOS）の1例を報告する。症例は，70歳女性で，口腔内の痛みを伴う腫瘤を主訴に近医を受診し，唾石と診断されたが，その後，頸部の細胞診によりclass V，扁平上皮癌と診断され，当センター頭頸科を招介，受診した。左口腔底に健常粘膜に覆われた硬結を認め，左舌下腺癌の疑いで，口腔底腫瘍部分切除術および左頸部郭清術が施行された。舌下腺部に，境界不明瞭な腫瘍を認め，腫瘍は，胞巣状，一部管腔様構造を示し，一部には粘液腫様の間質を伴う中異型度腺癌であった。免疫染色では，cytokeratin14，EMA等が陽性であった。以上の所見より，新WHO新分類（2005年）に照らし合わせて，腺癌NOSと診断した。

キーワード: sublingual gland, adenocarcinoma, not otherwise specified, immunohistochemistry

A case report of adenocarcinoma not otherwise specified of the sublingual gland

Kimihide Kusafuka¹, Yoshinori Takizawa², Ishiki Hiroto², Yoshiyuki Iida², Mitsuru Ebihara², Tetsuro Onitsuka², and Toru Kameya¹

¹Pathology Division and ²Division of Head and Neck Surgery, Shizuoka Cancer Center Hospital

(論文受付 2006年 7月26日)

(採用決定 2007年 1月26日)