原　　著

唾液腺腺房細胞癌の検討
—— 組織多彩性の理解と診断のポイント ——

浦野　　誠　　　黒田　　誠

(藤田保健衛生大学医学部病理部)

要旨: 唾液腺腺房細胞癌はその組織像の多彩性により，古典的な漿液性腺房細胞の増殖が明らかでない場合は診断が困難なことがある。今回，唾液腺に発生した腺房細胞癌9例について，組織パターンおよび細胞パターンにつき詳細に観察し，免疫組織化学的検討を行った。その結果，9例中6例では，定型的な腺房細胞型細胞の充実性増殖部を欠き，腺房細胞癌の組織多彩性があらためて明らかになった。腺房細胞癌の診断の鍵は，この組織多彩性と頻度の高い副所見を理解し，多くの例でアミラーゼの免疫染色は有用でないことを念頭におくことである。また通常は予後良好とされる腺房細胞型細胞の形態のまま再発浸潤を呈した例，腫瘍細胞の好酸性変化が目立った例につき報告した。

キーワード: salivary gland, acinic cell carcinoma, immunohistochemistry, histological pattern, cellular pattern

Acinic cell carcinoma of the salivary gland; its wide variety of histological, cellular pattern and the observation for an accurate diagnosis

Makoto Urano and Makoto Kuroda

Department of Surgical Pathology, Fujita Health University, School of Medicine

(論文受付 2006年11月 2日)

(採用決定 2007年 1月26日)