症例報告

多彩な組織像を示す卵巣腫瘍の1例
—— 奇形腫を背景として発生したと考えられる粘液性嚢胞性腫瘍
およびカルチノイド腫瘍合併例 ——

津堅美貴子¹　　　森山佐知子¹　　　山本　るみ¹
土井　妃代¹　　　堀口慎一郎¹　　　比島　恒和¹
大橋　健一¹　　　船田　信顕¹　　　尾崎　喜一²
若林　　晶²　　　水谷　勝美²

(¹都立駒込病院病理科，²同　婦人科)

要旨: 症例は69歳女性。入院となる1ケ月前に，排尿時痛を主訴に近医泌尿器科を受診したところ，子宮筋腫を疑われ，当院婦人科を受診した。画像上，卵巣腫瘍の診断にて，開腹術となった。右卵巣腫瘍は7 cm大と4 cm大の2房性であり，大きい嚢胞には粘液が充満し，嚢胞壁には約1.5 cm大の円盤状の肥厚を認めた。小さい嚢胞には粥状物を入れていた。組織学的所見では，大きい嚢胞は一部に微少浸潤を示す粘液性嚢胞腫瘍であり，壁の円盤状肥厚部分にはカルチノイド腫瘍を認めた。小さい嚢胞は重層扁平上皮あるいは線毛上皮で覆われた成熟嚢胞性奇形腫(単胚葉性奇形腫)であった。免疫組織化学的検索では，粘液性嚢胞腫瘍の細胞にもシナプトフィジン陽性細胞を認め，粘液性嚢胞性腫瘍とカルチノイド腫瘍の移行部の詳細な形態像をとらえることができた。

キーワード: ovary, carcinoid tumor, mucinous cystic tumor, mature cystic teratoma

A case of the ovarian tumor with various pathological future-cartioid tumor and mucinous tumor arising in a mature teratoma

Mikiko Tsugata¹, Sachiko Moriyama¹, Rumi Yamamoto¹, Hiyo Doi¹, Shinichiro Horiguchi¹, Tsunekazu Hishima¹, Kenichi Ohhashi¹, Nobuaki Funata¹, Yoshikazu Ozaki², Akira Wakabayashi², and Katsumi Mizutani²

¹Department of ¹Pathology and Department of ²Gyneology, Tokyo Metropolitan Komagome Hospital

(論文受付 2006年 6月22日)

(採用決定 2006年11月30日)