症例報告

肺癌からの転移巣が腸重積を惹起した1症例

小嶋 啓子1   斎藤 哲也2   鉄本 訓史3
小西由里子4   伏見 博彰1

(1地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立急性期・総合医療センター病理科,
2同 外科,3同 内科,4同 消化器内科)

要旨: 60代男性の空腸に肺癌からの転移巣が腸重積を惹起した稀な1例を報告する。1週間前に微熱と嘔気が出現し,急性胃腸炎として治療されていたが改善せず,頻回の嘔吐が出現したため,当センター内科へ紹介入院となった。レントゲンやCT等の画像所見にて空腸の重積と右肺腫瘤を認め,肺癌の小腸転移が疑われたため,開腹手術が施行された。切除空腸では最大径7 cmのポリープ状病変を先進部として,口側腸管が肛門側に入り込んで嵌頓していた。ポリープ状病変の割面は白色で,充実性であった。組織学的には粘膜下層∼固有筋層を中心に大型異型細胞のびまん性増殖像を認めた。免疫組織化学的にEpithelial membrane antigen,cytokeratin7(CK7)陽性,TTF1が陽性,cytokeratin20(CK20)陰性であった。組織型に関しては角化,細胞間橋,粘液産生などの特定の分化傾向を認めなかったことより,未分化癌と診断された。また,気管支擦過細胞診にても空腸腫瘍とほぼ同所見の細胞を認めた。疫学的に空腸腫瘍は転移性が多いことと,本症例の空腸腫瘍は粘膜下層∼固有筋層を中心に浸潤増殖をしていたこと,CK7陽性,CK20陰性,TTF1は陽性であったことから考え合わせて,この腫瘍は空腸原発ではなく肺癌の転移であると判断された。

キーワード: jejunum, metastasis, intussusception, lung cancer


A case of metastatic intestinal cancer from lung causing interssusception

Keiko Kojima1, Tetuya Saito2, Satoshi Tetumoto3, Yuriko Konishi4, and Hiroaki Fushimi1

Departments of 1Pathology, 2Surgery, 3Internal Medicine, and 4Gastroenterology, Osaka Prefecture Hospital Organization, Osaka General Medical Center

(論文受付 2006年 7月 3日)

(採用決定 2006年10月27日)