症例報告

乳癌術後の左上肢リンパ浮腫を背景に発生した血管肉腫
(Stewart-Treves症候群）の1例

青木　直子¹　　　小林　博也¹　　　佐藤　啓介¹
櫻井　宏治²　　　立野　正敏¹

(¹旭川医科大学病理学講座，²旭川厚生病院病理)

要旨: 乳癌のため乳房切除術施行後に生じたリンパ浮腫を基盤として術後10年目に発症した血管肉腫（Stewart-Treves症候群）の1例を報告する。左前腕遠位端屈側皮膚には出血・凝血塊の付着を伴う潰瘍があり，腫瘍は表皮直下から深部脂肪織にかけて存在した。組織学的に細長い空隙を伴って異型細胞が充実性あるいは血管周囲に乳頭状に増殖していた。腫瘍周辺部では異型核を有する内皮細胞からなる拡張した小血管の増生をみとめた。免疫組織学的に血管内皮細胞マーカーである第VIII因子関連抗原が陽性で血管肉腫と診断した。

キーワード: subcutaneous tissue, post-mastectomy, lymphedema, angiosarcoma, Factor-VIII related antigen

A case of angiosarcoma associated with post-mastectomy lymphedema (Stewart-Treves syndrome)

Naoko Aoki¹, Hiroya Kobayashi¹, Keisuke Sato¹, Kohji Sakurai², and Masatoshi Tateno¹

¹Department of Pathology, Asahikawa Medical Collage
²Department of Pathology, Asahikawa Kohsei Hospital

(論文受付 2006年 8月18日)

(採用決定 2006年12月 4日)