症例報告

口腔に発生した脂腺癌の1例

上田　貴威¹　　　加島　健司¹　　　駄阿　　勉¹
近藤　能行¹　　　倉富　英治²　　　横山　繁生¹

(¹大分大学医学部病理学講座第1，²厚生連鶴見病院形成外科)

要旨: 74歳女性の口腔に発生した脂腺癌の1例を報告する。頬部皮下脂肪織深部（口腔内）の被包性腫瘍で，被膜周囲には小唾液腺が散見された。腫瘍の大半は類基底細胞の索状・小胞巣状増殖から成り，一部に脂腺細胞への分化を認めた。異型性，核分裂像，被膜浸潤もある事より，脂腺癌と診断した。発生母地として，口腔内の小唾液腺ないしはFordyce's spotsの可能性があるが，組織学的および肉眼的にFordyce's spotsに相当する病変を認めなかった事より小唾液腺由来と考えた。現在，再発腫瘍に対し加療中である。

キーワード: sebaceous carcinoma, basal cell adenocarcinoma, oral cavity, minor salivary gland, Fordyce's spots

A case of sebaceous carcinoma in the minor salivary gland

Yoshitake Ueda¹, Kenji Kashima¹, Tsutomu Daa¹, Yoshiyuki Kondo¹, Eiji Kuratomi², and Shigeo Yokoyama¹

¹First Department of Pathology, Faculty of Medicine, Oita University
²Department of Plastic Surgery, Kouseiren Tsurumi Hospital

(論文受付 2006年 8月25日)

(採用決定 2006年10月26日)