総　　説

歯原性腫瘍の分子病理学

熊本　裕行

(東北大学大学院歯学研究科口腔病態外科学講座口腔病理学分野)

要旨: 歯原性腫瘍は，歯の形成に関与する細胞由来の顎骨腫瘍の総称である。近年，歯原性腫瘍における遺伝子や分子の解析が進められ，これらの変化が発症や進展に関与することが報告されている。本総説では，歯原性腫瘍の発症に関わるとされる癌遺伝子，癌抑制遺伝子，DNA修復遺伝子，腫瘍ウイルス，増殖因子，テロメラーゼ，細胞周期制御分子，アポトーシス関連分子，歯の発生制御分子，硬組織関連蛋白および進展に関わるとされる接着分子，基質分解酵素，血管新生因子，骨吸収性サイトカインについて概説する。これらの分子病理学的側面は，歯原性腫瘍の病因，病理発生，病態の理解に重要であるだけでなく，診断や予後判定，新しい治療法への応用などにも貢献しうることが期待される。

キーワード: odontogenic tumor, molecular alteration

Molecular pathology of odontogenic tumors

Hiroyuki Kumamoto

Division of Oral Pathology, Department of Oral Medicine and Surgery, Tohoku University Graduate School of Dentistry

(論文受付 2006年10月 5日)

(採用決定 2006年11月30日)