症例報告

精巣精母細胞性セミノーマの1例

市原　　真¹　　　徳山　美佳¹　　　木村　太一¹
青柳　暎子¹　　　中田　康信²　　　田中　伸哉¹

(¹北海道大学医学部分子細胞病理学，²中田泌尿器科病院)

要旨: 比較的稀な精巣腫瘍である精母細胞性セミノーマの1例を報告する。症例は56歳男性。腫瘍は精巣内に限局し，直径25∼35 mm大，充実性，弾性軟，割面は灰白色から乳白色，境界明瞭で白膜への浸潤はみられず，出血・壊死を認めなかった。組織学的には3種類の大きさの異なる細胞の増殖がみられ，大型細胞や中型細胞には特徴的なspireme patternを呈するクロマチンが観察された。核小体の明瞭な中型細胞が腫瘍の主体であった。腫瘍細胞はPAS染色にて胞体に陽性像は認められず，免疫染色にてPLAP陰性であった。精母細胞性セミノーマの典型像と考えられた。外科切除術後5ケ月経過した現在，再発は認められていない。

キーワード: testis, spermatocytic seminoma, testicular tumor

Case report of spermatocytic seminoma

Shin Ichihara¹, Mika Tokuyama¹, Taichi Kimura¹, Eiko Aoyanagi¹, Yasunobu Nakata², and Shinya Tanaka¹

¹Laboratory of Molecular and Cellular Pathology, Hokkaidou University Graduate School of Medicine
²Nakata Urological Hospital

(論文受付 2006年 8月 1日)

(採用決定 2006年10月 2日)