症例報告

耳下腺原発小細胞癌の1剖検例

関根　彰子^1,2　　　蜂須賀　健^1,2　　　横尾　英明¹
宮永　朋実¹　　　中里　洋一¹

(¹群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野，²群馬大学医学部医学科（学生))

要旨: 58歳女性。右耳下部の腫瘤を自覚して近医を受診。穿刺吸引細胞診では反応性病変とされたが増大傾向が続き，摘出術を施行。術中迅速診断では悪性リンパ腫が疑われるも永久標本にて小細胞癌と確定診断された。免疫組織化学的に神経系マーカーの発現が認められた。術後の画像診断で全身転移が判明，化学療法を行うも全経過約7ケ月で死亡した。本例は診断確定に至るまで難渋し，唾液腺腫瘍の鑑別疾患の一つとして小細胞癌を考慮しておくべきことが示唆された。耳下腺小細胞癌の剖検例は稀少で，同腫瘍の経過を知る上で貴重である。

キーワード: parotid gland, small cell carcinoma, neuroendocrine differentiation, autopsy

An autopsy case of small cell carcinoma of the parotid gland

Akiko Sekine^1,2, Takeshi Hachisuka^1,2, Hideaki Yokoo¹, Tomomi Miyanaga¹, and Yoichi Nakazato¹

¹Department of Human Pathology, Gunma University Graduate School of Medicine

(論文受付 2006年 7月10日)

(採用決定 2006年 9月19日)