症例報告

臨床的に陰茎癌が疑われた第1期梅毒の1例

近藤　能行¹　　　加島　健司¹　　　駄阿　　勉¹
矢田　直美¹　　　奈須　信吉²　　　横山　繁生¹

(¹大分大学医学部病理学講座第1，²国立病院機構大分医療センター泌尿器科)

要旨: 51歳男性にみられた第1期梅毒の1例を報告する。包皮に硬結を伴うびらん・潰瘍が生じ，臨床的に陰茎癌が疑われ，包皮環状切除・鼠径リンパ節摘出術が施行された。組織学的に悪性所見はなく，多発性のびらん・潰瘍，真皮の密な炎症細胞浸潤が認められた。炎症細胞は形質細胞を主体とし，閉塞性血管炎の像も散見された。リンパ節には，被膜の線維性肥厚，リンパ瀘胞の過形成，類上皮細胞性肉芽腫，閉塞性血管炎が認められた。抗T. pallidum抗体を用いた免疫染色，免疫電顕にてスピロヘータを確認し，第1期梅毒と診断した。

キーワード: genital organ, skin, lymph node, primary syphilis, Treponema pallidum

A case of primary syphilis

Yoshiyuki Kondo¹, Kenji Kashima¹, Tsutomu Daa¹, Naomi Yada ¹, Nobuyoshi Nasu², and Shigeo Yokoyama¹

¹First Department of Pathology, Faculty of Medicine, Oita University

(論文受付 2006年 5月26日)

(採用決定 2006年 9月 5日)