症例報告

肉芽腫性膵炎の1例

野口　寛子¹　　　新谷裕加子¹　　　大田　泰徳¹
井下　尚子¹　　　藤井　丈士¹　　　大橋　健一¹
松田　正道²　　　渡邊　五朗²　　　福島　純一³
福里　利夫³

(¹虎の門病院病理部，²同　消化器外科，³帝京大学医学部病理学教室)

要旨: 十二指腸乳頭部腫瘍を疑われ，膵十二指腸切除術で摘出された膵組織に，多数の肉芽腫形成を認めた67歳の男性例を経験した。膵管周囲を中心に，多核巨細胞を伴う多数の肉芽腫形成がみられた。膵内に軽度の線維化，軽度の炎症細胞浸潤，膵管上皮に強い扁平上皮化生が観察され，膵周囲に軽度の脂肪壊死を伴っていた。周囲のリンパ節に肉芽腫形成は認めず，他の肉芽腫形成性疾患の合併もなかった。膵に限局した肉芽腫形成をみることはまれであり，その発生機序や意義について考察した。

キーワード: granulomatous pancreatitis, granuloma, epithelioid cell granuloma, pancreatitis, pancreas

A case of granulomatous pancreatitis

Hiroko Noguchi¹, Yukako Shintani¹, Yasunori Ota¹, Naoko Inoshita¹, Takeshi Fujii¹, Kenichi Ohashi¹, Masamichi Matsuda², Goro Watanabe², Junichi Fukushima³, and Toshio Fukusato³

Departments of ¹Pathology and ²Surgery, Toranomon Hospital

(論文受付 2006年 6月22日)

(採用決定 2006年 9月 7日)