症例報告

多発肝膿瘍様の画像所見を呈し，肉腫様胆管細胞癌と考えられた1例

塩沢　英輔¹　　　河野　修一²　　　大阿久俊郎²
竹村　正伸²　　　野呂瀬朋子¹　　　高梨秀一郎¹
矢持　淑子¹　　　瀧本　雅文¹　　　太田　秀一¹
塩川　　章³

(¹昭和大学医学部第二病理学教室，²汐田総合病院外科，³昭和大学横浜市北部病院病理科)

要旨: 68歳男性。発熱と右上腹部痛を主訴とし，CT検査にて肝に多発する嚢胞を認めた。抗生物質の投与で一旦は症状が改善したが，全身状態の悪化により死亡し腹部局所解剖が施行された。剖検で肝内に多発する灰白色の結節を認め，結節の中心部壊死傾向が強く肉眼的に嚢胞状の構造を呈していた。形態学的特徴および免疫染色所見から肉腫様胆管細胞癌 sarcomatous cholangiocarcinomaと診断した。肉腫様胆管細胞癌は稀な原発性肝癌で，本症例は生前の画像検査では多発肝嚢胞様の像を呈し，確定診断が困難であった。生前にドレーン排液細胞診で紡錘形の異型細胞が少数みられたが確定診断には至らなかった。本症の細胞診に関する報告は少なく，文献的考察を含めて報告する。

キーワード: liver, sarcomatous cholangocarcinoma, cytology

A case of sarcomatous cholangiocarcinoma

Eisuke Shiozawa¹, Shuichi Kawano², Toshiro Oaku², Masanobu Takemura², Tomoko Norose¹, Shuichiro Takanashi¹, Toshiko Yamochi-Onizuka¹, Masafumi Takimoto¹, Hidekazu Ota¹, and Akira Shookawa³

¹Second Department of Pathology, Showa University School of Medicine
²Department of Surgery, Ushioda General Hospital
³Department of Pathology, Showa University Northern Yokohama Hospital

(論文受付 2006年 1月 6日)

(採用決定 2006年 4月 3日)