症例報告

潰瘍性大腸炎に合併した全身性水痘帯状疱疹ウイルス感染症の1剖検例

小川　弥生¹　　　田中　　敏¹　　　高田　明生¹
武内　利直¹　　　岡田　昌生²

(¹市立札幌病院病理科，² 同　救急救命センター)

要旨: 難治性の潰瘍性大腸炎で，免疫抑制剤による加療中，肝機能障害を来たし，敗血症も合併して死亡した全身性水痘帯状疱疹ウイルス（VZV）感染症の1例（20歳，男性）を経験した。剖検時に肝臓は斑状あるいは巣状の出血を肉眼的に認め，組織学的には散在性の肝細胞の壊死を認めた。残存している肝細胞には核内封入体や多核細胞を認め，これらの細胞は免疫組織学的に抗VZV抗体に陽性像を示した。その他，食道，脾臓，副腎に同様のウイルス感染細胞が多数認められた。潰瘍性大腸炎に全身性のVZV感染症を合併した報告例は希少であり，病理解剖所見を中心に報告する。

キーワード: ulcerative colitis, varicella zoster virus, liver failure, opportunistic infection

An autopsy case of disseminated varicella complicating ulcerative colitis

Yayoi Ogawa¹, Satoshi Tanaka¹, Akio Takada¹, Toshinao Takenouchi¹, and Masao Okada²

Departments of ¹Pathology and ²Intensive Care Unit, Sapporo General City Hospital

(論文受付 2005年11月22日)

(採用決定 2006年 2月14日)