症例報告

hSNF5/INI1遺伝子の全欠失を認めた腎悪性ラブドイド腫瘍の1例

孝橋　賢一¹　　　小田　義直¹　　　木下　義晶²
田尻　達郎²　　　高橋由紀子²　　　田口　智章²
水田　祥代²　　　恒吉　正澄¹

(¹九州大学大学院形態機能病理，² 同　小児外科)

要旨: 症例は1歳男児。左腎原発の腫瘍を認めたため，腫瘍摘出術を施行した。腎悪性ラブドイド腫瘍の病理診断で，その後の集学的治療にもかかわらず，初回術後10ケ月目に永眠された。悪性ラブドイド腫瘍では，hSNF5/INI1遺伝子異常を高頻度に認めることが報告されており，本症例においては全欠失を認めた。同遺伝子異常は他腫瘍においても報告があり，腫瘍特異的なものではないが，鑑別診断の一助になりうる。悪性ラブドイド腫瘍の診断においては，形態学的検討を基盤として，免疫組織化学的，分子生物学的検討を加え，総合的に鑑別することが重要である。

キーワード: kidney, malignant rhabdoid tumor, hSNF5/INI1, homozygous deletion

Malignant rhabdoid tumor of kidney with homozygous deletion of the hSNF5/INI1 gene

Kenichi Kohashi¹, Yoshinao Oda¹, Yoshiaki Kinoshita², Tatsuro Tajiri², Yukiko Takahashi², Tomoaki Taguchi², Sachiyo Suita², and Masazumi Tsuneyoshi¹

Departments of ¹Anatomic Pathology and ²Pediatric Surgery, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University

(論文受付 2005年11月25日)

(採用決定 2006年 1月24日)