症例報告

両側卵巣ならびに虫垂に異時性に粘液性嚢胞腫瘍を認めた
腹膜偽粘液腫の1手術例

南　　恩姫¹　　　信川　文誠¹　　　福村　由紀¹
柏木　聡子¹　　　斎藤　　啓²　　　平井　　周¹
松本　俊治¹　　　須田　耕一¹

(¹順天堂大学医学部病理学第一講座，²浦安市川市民病院臨床病理科)

要旨: 32歳，女性。右卵巣嚢胞腫瘍として初発し，8ケ月後に左卵巣と虫垂にも粘液性嚢胞腫瘍を認めた腹膜偽粘液腫の1手術例を経験した。組織学的に両側卵巣とも粘液嚢胞腺腫mucinous cystadenomaと診断された。虫垂には癌とするほどの異型が認められないものの，虫垂壁内に腫瘍細胞を含む粘液塊を多数認め，悪性と診断された。3臓器に対して行った免疫組織化学染色ではいずれも腸型intestinal typeの粘液形質を示したため，虫垂原発が示唆された。術後，化学療法を施行するも，初診時より3年で永眠された。

キーワード: pseudomyxoma peritonei, appendix, ovary, mucinous cystadenoma, mucinous cystadenocarcinoma

A case of pseudomyxoma peritonei, which presented mucinous cystic tumors of bilateral ovaries and vermiform appendix, at different times

Enji Nan¹, Bunsei Nobukawa¹, Yuki Fukumura¹, Satoko Kashiwagi¹, Akira Saito², Shu Hirai¹, Toshiharu Matsumoto¹, and Koichi Suda¹

¹Department of Pathology (I), Juntendo University School of Medicine
²Department of Clinical Pathology, Urayasuichikawa Citizen Hospital　

(論文受付 2005年 6月28日)

(採用決定 2005年10月20日)