総　　説

毛嚢系腫瘍の病理診断 —— 正常構造からのアプローチ ——
(その2)

泉　　美貴¹　　　向井　　清¹　　　蛇澤　　晶²

(¹東京医科大学病理診断学講座，²独立行政法人国立病院機構東京病院臨床検査科)

要旨: 毛嚢の正常構造と関連する腫瘍について述べる。正常の “毛母細胞” の出現こそが，石灰化上皮腫（毛母腫）を診断する鍵である。“内毛根鞘” は，トリコヒアリン顆粒が特徴で疾患特異性は低い。表皮系の癌のうち，“外毛根鞘” の淡明で柵状配列を示す核が存在すれば外毛根鞘癌と診断される。“峡部” の有棘細胞は波状を呈し，いわゆる外毛根鞘性角化を示す。外毛根鞘嚢胞は峡部に酷似している。嚢胞壁が増殖した病態が，増殖性毛包性嚢胞腫瘍で，高度の核異型や浸潤性の発育は悪性の指標とはならない。“漏斗部” の基底細胞が増生する腫瘍が脂漏性角化症である。

キーワード: hair follicle, calcifying epithelioma, trichilemmal cyst, proliferating trichilemmal tumor, seborrheic keratosis

Diagnosis of the follicular neoplasms of the skin based on embryological and histological aspects of the hair follicle: Part 2

Miki Izumi¹, Kiyoshi Mukai¹, and Akira Hebisawa²

¹Department of Diagnostic Pathology, Tokyo Medical University
²Division of Pathology, National Hospital Organization Tokyo Hospital

(論文受付 2005年12月16日)

(採用決定 2005年12月21日)