感染症の特殊染色について ~ Gram染色法を失敗しないためのポイント ~
【質問事項】1.当院ではGram染色コントロールとして,ヨーグルトに豚肉を浸漬して作製してみましたが,乳酸菌はGram陽性ですが陰性化してしまいます.そこで,大腸を水に入れて腐らせたものに浸染する方法を行い,陽性・陰性菌共に認めております.おすすめのコントロール方法をご教示ください.
2.Gram染色におけるキット使用の経験があれば,方法や注意点をご教示ください.
【回答】
1.内部精度管理用のコントロール標本は,検査対象(生体材料由来)に近いものが望ましいとされているため,過去の陽性例(G-菌はピロリ菌)などを利用するのが一般的となります.発表で挙げさせて頂いた通り,喀痰も代用可能です.廃棄用もしくはご自身で喀出した喀痰に100%エタノールを入れると2~5分程度で凝固し,ピンセットでつかめる状態になります.それを包埋カセットに入れ,10%中性緩衝ホルマリンで1晩固定後にパラフィン包埋を行います(もしくはセルブロック作製).標本中にはG+菌,G-菌のほか,カンジダ(G-)などが観察されます.
2.Gram染色キットとして市販されているものには,Gram染色で用いる試薬がセットとして販売されているものがあります.Gram染色で使用する試薬は比較的安定しているため,通常の染色手順に沿って実施すれば問題ありません.発表でも触れた通り,Gramのヨウ素液だけは不安定なため,Gram染色の実施頻度が少ないご施設ではなるべく少用量の製品を用い,試薬は短期間で消費すべきです.その他は,G+菌の陰性化や染色性の低下がみられた場合はヨウ素液を再調整するか,新たに購入することが望ましいです.