感染症の病理診断
【質問事項】
1.抗生物質投与によってグラム染色が染まりにくくなる菌がいると仰っておりましたが,グラム染色以外に,抗生物質の投与によって染まりにくくなる染色などございますでしょうか.

2.アンモニア銀を用いたグロコット染色は,共染が抑えられ良いとのことですが,アンモニア銀を用いたグロコット染色において,使用する際の注意点などございましたら,ご教授いただけないでしょうか.例えば,アンモニア銀を用いたグロコット染色では染まりにくい真菌がいる,など.


【回答】
1.Gram染色では,Gram陽性菌の細胞壁を構成する厚いペプチドグリカン層に,媒染処理によりクリスタルバイオレットとヨウ素の複合体が強固に結合します.例えば,細胞壁合成を阻害するペニシリン等の抗生物質が投与されると,細胞壁で複合体を保持できず,染色性が低下すると考えられます.抗生物質が具体的にグラム染色以外の染色性を低下させるかどうかはわかりません.細菌の種類,染色液の親和性,抗生物質の作用機序等が染色性に影響を及ぼすと推定されます.

2.当院ではメセナミン銀を用いる従来のグロコット染色を行っており,アンモニア銀を使用する染色法は検討していないので,残念ながらご質問にお答えできません.メセナミン銀を使用している当院では,共染を防止するために銀液との反応時間や,クロム酸の劣化等に注意して染色しています.

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