HE染色の原理とポイント
【質問事項】
1.HE染色標本を作製後,1週間ぐらいでスライドガラス上にオレンジ色の色素のにじみが見られることがあります.夏場に見られることが多いようです.脱水系列のエタノールの交換には気を遣っていますが,他の原因で考えられることはありますでしょうか.

2.HE染色には退色に対する対応が大切だと思いますが,それに対する対処法として考えられることがございましたらご教授お願いいたします.


【回答】
1.HE染色標本作製後約1週間でオレンジ色の色素のにじみが,特に夏場に起こるとの事ですので,その原因としてはアルコール脱水が不十分ないし水分又はアルコール分が封入標本へ微量持ち込まれていることが考えられます.夏場の湿度の高い時期,脱水系列のアルコールは吸湿性があるので,乾燥した冬場に比較し早く水分量が多くなり劣化します.組織部位に親和している水溶性またアルコールに少し溶解するエオシンは,封入標本中微量の水分やアルコール分へ経時的ににじみでることが考察されます.そこで夏場はより脱水系列のアルコールをより早めに交換されることをお勧めいたします.
 もし新しい製造ロットのアクリル樹脂系封入剤を使用したHE染色標本で黄色ないし赤色のエオシンのにじみが生じる場合は,その封入剤が問題となる場合があると考えらえます.

2.色素は光漂白により褪色しますが,それを防ぐには標本は暗室保管が必要となります.また標本の褪色のより大きな原因として,組織部位に親和した水溶性ないしアルコール溶性の色素が経時的に標本内で溶出(ブリーディング)することがあげられます.そのブリーディングを抑制するためには,脱水,透徹をより十分に行い,封入標本に水分やアルコール分を持ち込まないことが重要となります.そのためには脱水用アルコールや透徹用キシレンを早めに交換,管理することが重要となります.特に梅雨の時期は吸水性のあるアルコールは早く劣化しますので,早めの交換が必要となります.

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