固定時における検体取扱いの取り組み 2
【質問事項】
1.手術材料の切り出しは,医師がされておりますでしょうか.
医師が行っている場合は,切り出しのタイミングは固定時間のコントロールに重要かと思いますので具体的な時間帯を教えてください.
また,切り出し後の片付けなど一日の業務のワークフローもありますので,定時までに業務を終えるための工夫も伺えれば幸いです.

2.ゲノム取り扱い規定により10%中性緩衝ホルマリンで固定されるようになりました.
HE染色の染色態度が悪い様な気がしております.何か影響があるのでしょうか.

3.過固定を避けるためプロセッサーのプログラムを変更して対応されているようですが,固定後のアルコール浸漬長時間を長くすることの影響(組織収縮,核酸断片化等)はないのでしょうか.


【回答】
1.手術材料の切り出しは,全例病理医が行なっています.当科の切り出し室には,写真撮影装置を備えたプッシュプル型切り出し台が2台設置されており,病理医1~2名で切り出しを行います.臓器の水洗や使用する器具の準備は技師が行い,手術検体の切り出しは10時から開始しています.技師は包埋面がわかるように切り出された組織へのマーキングをし,カセットの蓋を閉めるなどの介助を行います.手術検体の切り出し終了後に,使用した器具の片付けや,翌日に切り出す手術検体のマクロ写真の撮影を技師が行うため,手術検体の切り出しは原則16時までとしています.なお,生検検体やEMR,TUR,手術検体のリンパ節などは技師が切り出しを行います.また,他の業務を担当する技師が積極的に切り出し業務へのフォローに入り,17時には業務を終えるよう努めています.

2.当院では10年ほど前に,20%中性緩衝ホルマリン液から10%中性緩衝ホルマリン液に固定液を移行しました.その際,HE染色の染色性の確認を行いましたが,染色態度に明らかな差は見られませんでした.また,特殊染色や免疫組織化学法においても同様に明らかな差はありませんでした.

3.当院では,連休による固定時間の超過を防止するため,8時間のホルマリン固定後にプロセッシング工程の開始時間まで50%エタノールに浸漬して待機する休前日専用のプログラムを設定しています.休前日専用のプログラムで処理した検体において,核酸の品質不良により検査不可能となった例はこれまでにありません.また,ホルマリン固定後の検体を,エタノールに置換することによる核酸品質への影響が検討された論文も報告されており,エタノール浸漬時間を長くすることによる核酸品質への影響は少ないと考えています.
また,長時間のエタノール浸漬による組織収縮については懸念事項であったため,低濃度である50%エタノールを使用しています.
当科のように休日当番のシフトを組んでいない施設においては,連休中の検体の取扱いは大きな課題であるため,今後もさらなる検討が必要であると考えています. 

前のページに戻る