当院におけるホルマリン固定組織による遺伝子検査について
【質問事項】
1.手術材料は20%中性緩衝ホルマリンをご使用とのことでしたが,コンパニオン診断では10%中性緩衝ホルマリンとなっております.手術材料でコンパニオン診断を行うことがないのでしょうか.または,コンパニオン診断が対象になる検体は10%中性緩衝ホルマリンを使用しているのでしょうか.または保険点数を取っていないのでしょうか.

2.手術材料の切り出しは,医師がされておりますでしょうか.
医師が行っている場合は,切り出しのタイミングは固定時間のコントロールに重要かと思いますので具体的な時間帯を教えてください.
また,切り出し後の片付けなど一日の業務のワークフローもありますので,定時までに業務を終えるための工夫も伺えれば幸いです.

3.ゲノム取り扱い規定により10%中性緩衝ホルマリンで固定されるようになりました.
HE染色の染色態度が悪い様な気がしております.何か影響があるのでしょうか.


【回答】
1.手術材料は20%中性緩衝ホルマリンで固定したものを,コンパニオン診断にもゲノム検査にも使用しています.もちろん保険請求しています.

2.手術材料の切り出しは医師が行っています.9:30から切り出しを開始しています.
工夫でもないとは思いますが,手術材料の固定後のマクロ写真は9:30までに技師が撮影しております.それに加え,ある程度切り出しの仕方等が分かる症例についてはあらかじめカセットを作製しています.

3.当院では20年くらい前に,免疫染色が一般に染色されるようになる時に,非緩衝ホルマリンから緩衝ホルマリンに移行を検討しましたが,10%中性緩衝ホルマリンでは固定が悪くかつ溶血がおこるので,非緩衝ホルマリンに戻したことがあります.その後多くの施設で20%中性緩衝ホルマリンが使われるようになり,当院でも変更した経緯があります.
溶血や固定液による顕微鏡像の検討は、渡辺恒彦.各種の固定液. 日本病理学会編.病理技術マニュアル3 病理組織標本作製技術 上巻 切り出しから薄切まで.東京.医歯薬出版;1981年:13-35 に詳細に記載されていますので参考にしてください.
「染色態度が悪い様な」が何を指しているかわかりませんが,固定液によって形態的にも染色態度にも変化があるのは当たり前だと思っていますし,10%中性緩衝ホルマリンを使用する目的が遺伝子の保存ですので,気にすることないように思います.  

前のページに戻る