病理検査におけるデジタルデータ処理や管理
【質問事項】1.導入を検討するにあたり,2万円程度で導入可能な顕微鏡撮影装置はどのようなものがございますでしょうか.
2.当施設ではNanozommerを使用していますが,オート読み取りでは少なからず画像を取り込めない標本があります.
診断で用いることのできるWSIは,フルオートでの読み取りとのことを聞いたことがありますので,取り込めない標本があるのではないかと思っております.
取り込みできない標本はどの程度ありますでしょうか,また取り込みできない標本の取り扱いは後のようにされていますでしょうか.
【回答】
1.ご質問ありがとうございます。顕微鏡に三眼鏡筒とカメラ用のCマウントアダプタが装着されておりましたら、あとはRaspberry Pi Camera HQ と Raspberry Pi本体(計2万円程度)を購入することで環境を整えることができます。三眼鏡筒は10万円、Cマウントアダプタは顕微鏡メーカによりますが5万円程度します。Raspberry PiはLinux環境(Raspi OS)で動作する小型PCですが、カメラを操作するためには何らかの方法でプログラミングが必要です。Raspberry Pi 4Bであれば、様々なプログラミング環境が整っており、初めてトライされる方でしたら解りやすいPythonがお勧めです。Picameraというライブラリを使うと簡単に制御できます。下記リンクの通りプログラムすれば動きますが、もしテンプレートが欲しいということでしたらテキストでお送りしますのでお知らせください。
picamera — Picamera 1.13 Documentation
2.私(高松)の所属するがん研では、診断用途では主としてPhilips社のスキャナを利用しています。このスキャナはフルオートで、スライドをセットするだけですが、仰られますようにフォーカス不良あるいは検体検出不良は頻発しています。技師が検体の周りをサインペンで囲うなどして工夫してスキャンが100%に近づくようにしていますが、どうしても取り込めないものはあります。全くスキャンができない標本は1日1枚あるかないかというところですが、陰性の免疫染色、セルブロック、極小検体などは取り込めないことが多く、Leicaスキャナなどでリトライして完了させることが多くなっております。したがって、それらのスキャンクオリティチェックが肝となるわけで、技師の役割がとても重要となります。Philipsスキャナで取り込んだ画像はImage management system(IMS)を通じて即座に端末から確認できるというメリットがあり、これは診断業務に用いる場合は最優先事項となりますが、他のスキャナの画像も転送(時間がかかります)することで、IMSで閲覧できるようになります。