コロナ禍における薄切 ~当院での取り組み~
【質問事項】
1.病理医の切り出し時に技師がついている場合,もしくは技師同士の作業に関して,何か感染対策は講じていますでしょうか.マスクをして作業をしていても,病理医と技師の距離が近く,時間的にも1時間以上の作業となれば,コロナ感染者が発生した場合,濃厚接触者になるかが議論されるかと思います.

2.薄切以外の他の作業について,紹介して頂いたこと以外で対策を講じていることがあれば,教えて頂きたいです.

3.コロナ感染対策としての手軽な自作加湿装置のご紹介ありがとうございます.切片を浮かべる水槽が原因でカビのコンタミネーションの経験があるのですが,加湿装置の本体とホース部分からなっていると思いますが,使用やお手入れで特に注意している点はありますでしょうか.


【回答】
1.当院では医師の切出しに技師はついておらず、別々に作業を行っていますが、作業時はマスクやグローブなどの感染防護具の使用はもちろん、共同で使用するPCなどはアルコール消毒液による清拭を実施し、接触感染を防止しています。
コロナ感染者が発生した場合には、濃厚接触者における最新の定義を確認し、感染対策室などの専門部署に感染防護具などの使用状況を伝えた上で、判断を委ねるようにしています。

2.薄切以外では、感染リスクの高い病理解剖での作業方法を変更し、CAPガイドラインや日本病理学会の指針に則った運用を行っています。
解剖の実施に当たり、新型コロナウイルス感染および疑い患者の受付は行っていませんが、それ以外で入院14日未満の患者には解剖前に院内にてPCR検査を実施し、陰性を確認しています。
解剖の実施手順においては臓器を取り出す順番を変更し、感染リスクの高い肺、舌~気管、骨盤臓器などは最後に取り出すようにしています。エアロゾルが発生する吸引器やストライカーは使用せず、体腔液の計測には計量カップを用い、骨髄の代わりに胸骨を採取しています。ストライカーなしでの開頭は難しいため、脳の取り出しは行っていません。取り出した臓器は直ちにホルマリン固定液に浸漬し、その後、重量測定と写真撮影を行っています。また、体腔液や血液などの体液は、固化剤で固めてから廃棄しています。

3.カビのコンタミネーションについて特に注意すべきは遺伝子検査なので、遺伝子検査用切片だけは水槽を分け、精製水を使用しています。
加湿器については業務終了時に外せる部品はすべて外し、機器本体も裏返しにして、乾燥させています。市販の加湿器は重量が軽く、たくさんの部品が外せることが利点です。ホースや部品に関しては、ハイターを希釈した水槽に漬け置きし、洗浄しています。

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