ESD検体 当院での取り組み ~シートによるサンドイッチ・包埋時倒立法~
【質問事項】
1.検体の中には非常に薄いESD標本,または切り離されたESDが提出されると思いますが,その様な場合でも同等に作製されますか.
2.ESD検体の処理方法は施設により様々だと思いますが,サンドイッチ・包埋時倒立法を使用する前はどのような方法でESD検体の処理を行っていたのか,差し支えなければご教示いただければと存じます.
3.シートを用いることによって,パラフィン浸透過程での薬液の持越しや劣化が著しく感じることはございませんか.
4.本法に適さない材料や,実際行ってみて失敗してしまった様な,注意すべき事例はございませんか.

【ご回答】
1.薄い組織片や切り離されたサンプルは,切出す方向や厚みを考慮すること,シート上の配置や包埋時の上部シートを剥がすときに組織片が移動しないようにすること,包埋カセットに入れる組織片の本数を制限するなどの対応で,問題なく作製可能です.

2.当院の切出しのルールとして,切出し面(薄切面)が観察可能な状態にカセット詰めを行っている.ESD検体もそれに沿って切出し断面が観察可能な状況に組織片を倒立させ,分画カセットやプロカセット内にスポンジなどで固定していました.この場合,カセット内で組織片が歪むことが多く,包埋が困難になることが多く見受けられました.

3.シートを用いることで薬液の持ち越しは懸念される事項ですが,当院で行っている薬液交換の頻度では,薬液の持ち越しによる影響は特に感じられません.

4.丈の高い組織片の場合は,切出し後の組織片を90度倒して薄切面を下にした状態でシートに挟み,包埋時に平行移動させて包埋するようにしています.また包埋時倒立法の場合,カセット内に入れる組織片の数は,無理せず自分の技量に見合った本数にすることが大切です.最初は少なめの本数からはじめ,切出しと包埋になれてきたら徐々に本数を増やすこと,切出しした時の感触で,自信を持って包埋可能な切出し本数に設定することが失敗しないコツと思います.

【追加のご発言】
本法は,断端評価が必要なESD以外の平面的なサンプル(皮膚や舌など)においても応用可能です.

前のページに戻る