病理検査における廃棄物の取り扱いについて
【質問事項】
1)切り出し済み臓器の廃棄についてお聞きします.当院でも以前は火葬場での処理をお願いしておりましたが,ホルマリンが残っていると処理が出来ないとの事で,現在は感染性廃棄物として感染性の容器に密閉し廃棄しています.先生のご施設ではパックされた状態で火葬場での廃棄との事ですが,ホルマリン等の対応はどの様になされておりますでしょうか.

【回答】
1)ご質問いただき,誠にありがとうございます.
当院では,切り出し前に臓器を水洗し,切り出し済みの臓器は乾燥しない程度のホルマリン代替試薬を加え,真空パックしております.
ホルマリンは,施設内でホルマリン処理装置により分解処理しております.

【追加の発言】
感染性廃棄物の判断フローでは「排出場所の観点」から「検査室において検査等に使用された後,排出されたもの」を感染性廃棄物とされ,臓器は感染性一般廃棄物に分類されています.ホルマリンについて,廃棄物の処理及び清掃に関する法律では特別管理産業廃棄物として適正な処理が求められています.ホルムアルデヒドの廃棄処理法には,酸化法,燃焼法,活性汚泥法(酸化法:大量の水を加えて希薄な水溶液(2%以下)にした後,次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解した後,廃棄する.又は,水酸化ナトリウム水溶液を加えア ルカリ性とし,過酸化水素水で分解した後,大量の水で希釈して処理する. 燃焼法:アフターバーナ及びスクラバを備えた焼却炉の火室に直接噴霧して焼却する. 活性汚泥法:菌が死滅しない濃度以下に希釈して,活性汚泥処理により処理する. )があります.ホルムアルデヒドには,廃棄物処理法のほか,毒物及び劇物取締法,大気汚染防止法,水道法,労働安全衛生法等の法規制が存在するため,廃棄については「その関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと. 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者,もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する. 廃棄物の処理を委託する場合,処理業者等に危険性,有害性を十分告知の上処理を委託する.」必要があります.
参考に,臓器の最終処分のとして,「剖検臓器の処理をめぐる諸問題―群馬県内および近県の腫瘍病院へのアンケート結果から―(Kitakanto Med.J.49(4):223~228,1999.)」では,火葬場が22施設中20施設.臓器の処理方法として,22施設中ホルマリン漬けのまま廃棄または業者に委託と回答した施設が1施設(最終処分との関連は不明)と報告されています.また,解剖臓器の処理に関するあるアンケート調査では,15施設中で11施設が火葬でそのうち,前処理として「そのまま(提出方法)」と回答された施設は2施設ありました.

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