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免疫組織化学染色の精度管理と一次抗体におけるピットホール

芹澤昭彦1),川井健司2),小山田裕行3),伊藤 仁1)

1)東海大学医学部付属病院 病理検査技術科
2)公益財団法人実験動物中央研究所 病理解析センター
3)東海大学医学部付属大磯病院 中央臨床検査科


近年,国の政策に代表されるがんゲノム医療や分子標的治療薬の開発により,免疫組織化学染色(以下:免疫染色)は,その診断や治療適応の判定において重責を担っている検査となっている.HER2やALKなど保険収載されている免疫染色(コンパニオン診断薬)では,検体の取り扱いや染色においては,各学会のガイドラインやメーカー指定の染色方法が推奨されており,その方法以外での実施は結果の正確性は担保されていない.また,その染色結果には半定量性の判定結果が求められているため,「いつ」「どこでも」「だれも」が行っても同じ結果である,いわゆる正確性や再現性といった精度管理が重要となってきている.コンパニオン診断薬以外の免疫染色でも,多くの病理検査室で通常業務として染色が行なわれており,自動免疫染色装置の普及に伴い比較的簡便に染色が行なわれている.しかし,その染色の至適条件は抗体により異なっており染色方法は複雑化している.このことは我々が行った精度管理でも,同一の抗体を使用下にも関わらず施設ごとの染色条件が異なることにより染色性の差が認められたことは,同一のプロトコールによる標準化はなされていないためである.そのため,施設内での染色結果のバラツキによる染色結果の差を認める事もあり患者の治療方針や診断にも影響を及ぼすため,現在の免疫染色に対する精度管理は大きな問題点とも言える.とくに,使用する一次抗体に関しても抗体の感度や特異性(他の腫瘍との反応性)を理解しておかないと誤った判定になりかねない点や,免疫染色の精度を管理する上で,常に安定して良好な結果を得るためには,技術者のテクニックや知識が染色結果に影響する事が多いと思われる.その技術トラブルを回避するために心得てほしい免疫染色のピットホールとして種々の経験や自験例を紹介して解説する.


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