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乳癌診療と研究に関するトピックス

増田しのぶ

日本大学医学部病態病理学系 腫瘍病理学分野


 病理組織技術は、診療現場のニーズにより進歩する。現在、診療と研究の距離は近づき、研究成果が臨床応用されるまでの時間は短くなり、また臨床情報が次の研究課題を創出する基盤が構築されようとしている。
 本講演では、乳癌診療と研究における2つのトピックスを紹介する。
 ひとつは、昨年改訂された乳癌取扱い規約 第18版の改訂内容の紹介である。乳癌学会では、2012年からNational Clinical Database (NCD)の登録システムに、年間約70,000件を超える症例情報が蓄積されている。これらの情報収集は、乳癌取扱い規約に基づいて行われており、取扱い規約はデータ集積の基礎である。今回の改訂は、現在までの、本邦における乳癌診療の枠組みの変遷を尊重しつつ、一方、WHO組織型分類(乳腺, 第4版)(2012年)、Union for International Cancer Control (UICC) 第8版 (2017年)、また、今後発行予定である領域横断的癌取扱い規約とも整合性がとれることを主たるコンセプトとした。
 もうひとつのトピックスとして、研究分野における多重染色について紹介する。癌組織は、われわれが従来考えていたほど単一腫瘍細胞からなっているわけではなく、構成細胞の多様性が明らかになっている。膨大なNext generation sequenceによる解析結果が提供されてきているが、病理組織を用いた多重染色は、分子情報と腫瘍内・細胞内の位置情報を統合的に理解する一つの手段であり、その有用性は高いと考える。


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