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肺癌の臨床から病理・細胞診まで

佐藤之俊

北里大学医学部呼吸器外科学


 本邦の死因の第一位は悪性腫瘍であり,中でも肺癌による死亡は年間7万3000人を超える.肺癌に対する治療では,外科治療や分子標的治療の適否を決める上で組織型診断は極めて重要である.例えば,細胞診・組織診において,従来は主に小細胞癌と非小細胞癌を鑑別することが基本であった.しかし,現在は特に腺癌と扁平上皮癌の鑑別が求められている.その背景には,疾患の特性に基づく精密医療precision medicineが実用化されつつあり,肺癌ではEGFR分子標的薬を端緒にALK,ROS1そして PD-L1といった治療薬開発・導入がなされ,対応する コンパニオン診断薬・体外診断薬等の結果に基づいた医療が行われているという流れがある.このように,特にチロシンキナーゼ活性を阻害する薬剤の開発が進む現在では,治療標的は主にがん遺伝子であり.このがん遺伝子を中心に,臨床試験も含めて実際の臨床の現場で用いられる遺伝子変化は4つ(変異, 増幅, 再構成, 過剰発現)に大別される.各変化について適切な検出方法や対象組織が異なっており,その結果を正しく評価し治療につなげるためには肺癌の臨床に加え,病理・細胞学的な基礎を理解し,各種手技の意義を正しく理解する必要がある.さらに,肺癌診療ガイドライン2017においては,肺癌の治療前には,組織診断または細胞診断を行うことが強く勧められると記載されている.
 そこで本講演では,肺癌の臨床に関連して画像診断と外科治療の最近の話題,肺癌取扱い規約,そして肺癌診療ガイドラインなどに関して提示する.画像診断に関しては,CT所見と病理組織所見ならびに細胞診の対比を中心に解説し,外科治療については,その適応と術式,予後を中心に,さらに肺癌取扱い規約では細胞診の項の解説を中心に,そして,肺癌診療ガイドラインについては遺伝子検査について触れたい.
 本講演が肺癌における病理技術全般の向上に役立てば幸いである.


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