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組織染色標本作製の留意点

畠山重春

永井マザーズホスピタル
日大板橋病院


 病理業務において日常施行される基本的染色法はヘマトキシリン・エオジン(HE)染色である。そのほかPAS反応をはじめとして、マッソン・トリクローム(MT)染色、鍍銀染色なども一般的染色法の一つに過ぎないといえるかもしれない。既に免疫染色もルーチン染色に加えられるべき状況となっているほか、遺伝子検査も導入されつつあり、現在の病理業務は実に多彩になっている。しかしながら、重要なのは薄切、染色など、標本作製の基本的技術であることにかわりはない。その観点から標本作製の留意点について個人的考えを含め述べてみたい。
 まずHE染色についてみると、求められるHE染色標本の基準をどのような視点におくべきであろうか。1)適切な病理組織診断が行える標本であること、2)検鏡して疲れない標本、3)少なくとも5年間は退色しない染色性であること。以上シンプルであるが3点に絞っている。たとえば、1)については、対象標本における腫瘍細胞の大きさなどを考慮した切片作製が不可欠である。悪性リンパ腫やユーイング腫瘍などは小型細胞によって構成されるため、誤診防止上、薄い切片が求められる。したがって薄切担当者は、特に注意すべき対象を事前に理解したうえで作業にあたる必要がある。多忙な中で薄切、染色状態を確認したうえで標本は病理医に回されるが、厚さの確認はどのように行っているのであろうか。対物レンズx40で検鏡すると厚さ確認は容易である。2ミクロン厚に薄切されている切片では、リンパ球のような小型細胞でも一層になっているはずである。微動装置で細胞が前後にずれても観えるならば、少なくとも4μ厚以上であると解釈するとよい。
 その他標本作製に関与する因子、不良標本、標本作製における精度管理について述べる予定である。


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