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迅速免疫染色装置における最近の話題

池田 聡

土浦協同病院 検査部


迅速免疫染色装置R-IHC(サクラファインテック)の登場により病理医のストレス原因の1つである術中迅速組織診断に免疫染色を応用することが容易になってきた。以前よりいくつかの施設では伸展器などで加温しつつ術中迅速組織切片に免疫染色を行っていたが、一般に普及されることはなかった。本装置を用いることにより標準化しにくかった凍結組織切片の免疫染色手順を均霑化できる。今回は凍結切片を用いた免疫染色の工夫およびR-IHCを用いた応用等についていくつかご紹介したい。
凍結組織切片の賦活化
凍結切片で組織診断を行う場合免疫染色の活用は有効であるが、通常のFFPE切片を用いる免疫染色では、熱等による抗原賦活化が多くの抗体で必須である。これらの抗体を凍結切片に応用した場合、力価の関係で偽陰性になることも多く使用できる抗体が限られてしまう。今回、より多くの抗体を使用できるように凍結切片に対しても熱処理を行い良好な結果を得た。検討の結果、99℃にウォーターバスで加熱したニチレイ社抗原賦活化液pH9を用いて5分 加熱処理することで多くの抗体が凍結切片に使用できるようになった。凍結切片は薄切後、15%中性緩衝ホルマリン、100%エタノールの1:1混合液で直ちに固定することが必要であった。染色には非特異的な反応はほとんどなく、客観性の高い免疫染色を併用することにより診断精度が高まり、患者への貢献はもとより病理医の診断ストレスの軽減にも大いに寄与すると考える。
R-IHCを応用したISHの迅速化
日常検査で用いられるISHとしては、HER2、ALK4などのDNAを標的にしたものとEBER,κ、λなどのmRNAを標的にしたものがある。EBERや骨髄腫におけるκ、λなどはmRNAのコピー数が多く最近では免疫染色と同じように日常検査に汎用されている。しかし、ISHは全般にハイブリ時間が長く、迅速化やプロトコルの単純化が課題である。今回、R-IHCの反応部位を温度コントロールできるように改良し、EBER,κ、λなどのmRNA ISHを迅速に行えるよう検討しつつありその進捗状況を紹介したい。通常ISHではハイブリダイゼーションに数時間から1晩かけられることが多い。しかし、切片に電解撹拌と適切な温度をかけることで数分から十数分でハイブリダイゼーションが行えることが可能であることがわかった。切片は加温により反応液が蒸発するのを防ぐため流動パラフィンでカバーされ、反応液は流動パラフィンの下層で撹拌されて反応が促進される。まだ機械は試作機の段階であるが、R-IHCをもちいた応用が進んでおり、様々な側面から病理検査の進歩に貢献していくものと思われる。


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