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電界非接触撹拌技術を用いた迅速免疫染色法(R-IHC)の確立に向けて

伊藤 智

秋田大学医学部附属病院 病理診断科・病理部


 電界非接触撹拌迅速免疫染色 (R-IHC) は、外部より電界を与えて発生する吸引力を用いて流体の撹拌挙動を発生させる電界砥粒制御技術を応用し、撹拌子を使用せず少量の液体を非接触で撹拌を行う技術で、抗原抗体反応を促進し、反応時間の短縮により迅速な免疫染色を可能にした。我々は、迅速免疫研究会に参画されている方々とともに技術の開発に携わり、R-IHC装置の試作や改良が重ねられ、2014年にラピートとして市販された。当院における700症例を超える迅速診断の実践を踏まえ、病理技師の立場から使用経験を中心に紹介させていただく。
 R-IHC装置を使用した免疫組織化学:2005年から乳腺センチネルリンパ節の微小転移検索を目的として捺印細胞診標本による術中用手迅速法を行ってきたが、R-IHCの開発に伴い、凍結組織標本との併用検索を実施している。また、脳腫瘍や肺腫瘍の質的診断、肺癌や子宮癌などのリンパ節転移検索、切除断端の検索等に応用し、良好な結果を得ている。
 R-IHC装置を使用した免疫細胞化学 (R-ICC) :充分な撹拌効果を得るためには抗体液面の表面張力が重要で、撥水効果の高いテフロン製の円形専用シールを使用している。切片はサークル内に貼り付け風乾、アセトン固定後に免疫組織化学を行い、捺印標本ではサークル内に捺印して95%エタノールで固定後に免疫細胞化学を行っている。液状細胞診検体(LBC)では、沈査を市販のLBC専用スライドに載せて固着またはサイトスピン処理した。LBC専用スライドは、細胞転写標本やセルブロック標本にも応用が可能である。
 R-IHCを術中診断に導入し、診断精度の向上につながっている実感がある。また、細胞診ではLBC専用スライドを使用することでR-ICCの応用領域が広がり、迅速でより正確な報告が可能である。今後は業務効率の向上を目的とした活用法も考えていきたい。


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