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大腸癌の発育・進展と病理組織所見で決定される大腸pSM癌の治療方針

池上雅博

東京慈恵会医科大学 病理学講座


 近年、診断技術の向上や内視鏡的摘除技術の発達により、大腸上皮性腫瘍に対する内視鏡治療の適応は、粘膜内癌(pM癌)はもとより、粘膜下層浸潤癌(pSM癌)にまで拡がっている。従来より大腸癌の転移危険因子については、多くの検索がおこなわれているが、現在でも内視鏡的に切除され、その後の病理学的検索でpSM癌であった場合、追加腸切除するか否かの決定については、組織学的な情報に頼るほかないのが実状である。したがってその決定については、正確な組織所見をもって行うべきであるし、正確なデータの集積によってその判定基準は決定されるべきであると考えられる。しかしながら、取り扱い規約を含めて従来pSM癌の転移危険因子として紹介されてきた因子は、過去の手法を用いた検索結果に基づいて出されてきたものであり、現時点の最新の手法を用いて導き出されたものではないことを理解しておく必要がある。我々は、悪性腫瘍において、リンパ節および遠隔転移と直接的に関係する腫瘍原発巣の組織学的所見は、リンパ管侵襲および静脈侵襲からなる脈管侵襲であると考えている。そこで我々は、リンパ管内皮を染色するモノクローナル抗体の一つであるD2-40染色を用いてリンパ管侵襲を、elastica-Van-Gieson(以下EVG) を用いて小血管レベルまでの血管侵襲を, CD31染色, CD34 染色を用いて毛細血管侵襲を正確に評価し、徹底的かつ客観的に脈管侵襲を評価し、正確なデータの基盤の下に大腸pSM癌のリンパ節転移危険因子における脈管侵襲の重要性について明らかにした。さらに、近年重要な転移危険因子として注目されている簇出とリンパ管侵襲・静脈侵襲との関係についても、明らかにした。さらに講演では、大腸癌の発育・進展についても述べる。


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