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脂肪染色総括

川島 徹

順天堂大学医学部附属浦安病院


 脂質は、人体を構成する3大成分の一つで重要成分である。
ヒトにおける大まかな構成比率は、文献により異なるが水分が50〜70%、タンパク質15~20%、脂質15~20%、ミネラル成分5~6%、糖質1%となっています。
 また脂質の種類も中性脂肪、コレステリン、コレステリンエステル、リン脂質、糖脂質、脂肪酸など多岐にわたっている。これらの成分は、病理標本作製時、特にホルマリン固定パラフィン包埋標本作製においては、様々な溶媒浸透を妨害するなどの障害が発生する。
 特に乳腺組織においては、CE脱脂液など脱脂法の改良がおこなわれている。迅速標本作製においてもパーフィックスなどの溶媒により、染色性が安定し迅速に染色できるように数々の工夫がなされている。
 本題である脂肪染色に関しては、数ある特殊染色の中で物理的溶融という現象により染色されるため類似した染色色素の種類や染色液の濃度に溶解溶媒により反応が異なる。アルコール溶媒の種類及び濃度によっても水溶性から非水溶性を示す分岐点も異なる。染色液の温度など様々な物理的要因により染色結果が大きく異なるため多くの改良法が生まれている。凍結切片薄切に関してもホルマリン固定した組織の凍結時のアーチファクトを最小限にするためにガムシュクロース溶媒やコンパウンドに漬けたりして水の結晶防止対策や切片の張り付きの改善などを工夫している。
 凍結切片作製に関しては、現在はクリオスタット切片を用い貼り付け法で染色くしている施設が主流であるが、本来のザルトリウス型ミクロトームを用いた凍結切片作製での切片を浮かせ法による染色手技も興味深いと考える。さらに、封入に関しても永久標本作製用水溶性封入剤など開発されておりさまざまな方法がある。
 最後に、このような背景を振り返りつつ脂肪染色について総括したいと考えている。


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