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脂肪染色標本作製時の工夫

浅見志帆

順天堂大学医学部附属練馬病院 病理診断科


【はじめに】
 脂肪染色では、パラフィン切片作製工程における有機溶媒により、脂質や類脂質が溶出するため、有機溶媒を使用せずに標本作製が可能な凍結切片が用いられる。未固定組織およびホルマリン固定組織が対象となるが、日常業務では病理組織診断時に脂肪染色が必要となる場合が多く、ホルマリン固定組織を用いた標本作製が求められる。
 クリオスタットによる凍結切片作製時には、一般的に乾燥固定が行われるが、染色中や封入時に脂肪滴の移動や溶出が見られることも少なくない。
 今回、ホルマリン固定組織を用いた脂肪染色における標本作製の工夫について述べる。
【ホルマリン固定組織の凍結切片作製方法】
①切り出し
 固定が良好な部分を厚さ3mm以下、縦横1cm程度の大きさに切り出す。前処理として、切り出した組織をホルトのガムスクロース液や10〜30%スクロース液に1〜2晩浸漬して組織内水分を置換すると、氷晶形成の防止や組織と包埋剤との間の亀裂防止に効果がある。
②包埋
 切り出した組織表面の余分な水分をガーゼ等で拭きとり、少量の包埋剤(O.C.Tコンパウンド等)を敷いた包埋皿に入れ、包埋剤を満たす。
③凍結
 ドライアイス・アセトン等の冷媒や凍結専用装置を用いて急速凍結する。アーチファクトである氷晶形成を防止するため、最大氷晶形成帯(0〜−10℃付近)を素早く通過させることが重要である。
④薄切(貼付法)
 クリオスタット庫内温度は新鮮凍結切片作製時と同様−30℃前後に設定して組織の状態に応じて調整する。切片厚は5〜10μmで薄切し、スライドガラスに貼付する。
⑤薄切後処理
 凍結切片は乾燥させないようドーゼの底に蒸留水やホルマリン液等で湿らせたガーゼを敷き、蓋をして湿潤状態を保つ。
⑥染色
 オイル赤O染色、ズダンⅢ染色等を行う。各染色でアルコール溶液が用いられるが、脂質の溶出に注意が必要である。
⑦封入
 水溶性封入剤を用いて封入するが、気泡が入りやすいため慎重に行う。


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