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ミクロトーム替刃の切れ味が落ちる原因の考察

藤本幸司

サクラファインテックジャパン株式会社


1.諸言
 ベテランの技師は、採取する切片が切削方向に圧縮されて短くなったり、カールの巻きが弱くなったり、左右でカールの直径が違ったりすることでミクロトーム替刃(以下替刃と記す)の切れ味が落ちたことを感じると聞いている。本講演では、替刃の切れ味がどのようなメカニズムで落ちているかを考察する。
2.実験
 替刃の切れ味を決定する要素には、替刃を構成する材料に関するものとして① 替刃の剛性 ② 替刃の硬度 ③ 替刃表面の摩擦係数があり、替刃の形状や保持状態に関するものとして④ 先端アール ⑤ 刃先角 ⑥ すくい角 ⑦ 逃げ角 ⑧ 引き角が挙げられる。これらの内、薄切中に変化する可能性のある要素は、先端アールの変化と替刃表面の摩擦係数がある。
 収束イオンビーム加工観察装置(日立ハイテクサイエンス㈱製)によって、未使用と薄切を行って切れ味が低下した替刃の断面を削り出し、替刃表面の状態と替刃の先端アールを観察した。
3.結果及び考察
 使用前後の替刃のFIB像を観察した結果、未使用の替刃を覆っていたフッ素系樹脂が、使用後の替刃では確認できなかった。一方で、先端アールの変化は今回の実験では確認できなかった。フッ素系樹脂の摩擦係数は、ステンレスの約10分の1と低く、フッ素系樹脂の欠損が摩擦力増加を招き、切削方向と逆向きに働く力が大きくなり、切れ味の低下を招いたと考えられる。
4.結言
 替刃の切れ味が落ちる原因として、替刃をコーティングしていたフッ素系樹脂の剥がれが影響していることが、収束イオンビーム加工観察装置によって得られた画像から分かった。
5.文献
皆藤孝、足立達哉;精密工学会誌、Vol. 53 No. 6 P 857-860(1987)


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