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ヘリコバクター・ピロリ証明のためのギムザ染色の検討

鈴木 美那子

慶應義塾大学医学部病理学教室


Helicobacter pylori(H.pylori)が1983年に分離同定され、潰瘍性胃炎や胃癌などの病変との関連が報告されるようになり、組織標本におけるH.pylori感染有無の判断は精度の高いものが求められている。H.pyloriを証明するための特殊染色には、Warthin-Starry染色、McMullen染色変法、アクリジンオレンジ蛍光染色、Giemsa染色が知られているが、中でもGiemsa染色は安価で、精度も比較的高く、染色工程も簡単であり日常の染色としては非常に優秀といえる。また、Giemsa染色は単純な染色工程でありながら、メチレンブルーが酸化されて形成する多種類のアズール色素やエオジンなどの効果で、多彩な色調を組織標本にもたらす利点がある。しかしながら、分別や脱水工程で色調が左右されるため、安定した染色性を再現するのは難しい。
目的とするH.pyloriは、通常胃粘膜表面を覆った粘液ゲル層内と胃粘膜上皮細胞辺縁に観察され、除菌後やプロトンポンプ阻害薬服用者においてはH.pyloriの菌体密度が低下し、胃小窩の深部へと進入することがある。したがって、Giemsa標本は粘液物質と菌体とのコントラストが明瞭なものが理想的である。
今回我々はGiemsa染色におけるH.pylori検出の精度向上を目的とし、染色工程においての分別液の濃度、染色液の濃度と時間、脱水剤が色調にもたらす影響について比較検討したので報告する。


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