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迅速免疫染色装置R-IHCを用いた免疫染色の基礎検討と応用

池田 聡

土浦協同病院 病理


はじめに
病理診断において、いまや免疫染色は必要不可欠な技術となっている。免疫染色を応用することにより客観的サポートが得られ、病理診断はより確実なものとなっている。そのような状況の中で病理医のストレス原因の1つである術中迅速組織診断に免疫染色を応用しようとする試みは最近盛んに行われている。当院でも2007年より術中迅速診断に対し独自に工夫した免疫染色を用手法で行ってより確実な診断を目指してきた。このほどサクラファインテック(株)より電解非接触撹拌技術を応用したヒストテックR-IHCが発売された。この技術は低周波電圧応用することにより水滴などの微量な液体を撹拌できる技術で、迅速に免疫染色ができるだけでなく病理検査に様々に応用できる可能性がある。今回、当院ではこのR-IHCを検討する機会を得たので、①凍結組織切片を用いた基礎定期な検討、②腎、皮膚などの蛍光染色、③細胞診標本を用いた免疫染色についての検討を行った。
方法
① 迅速組織診における染色条件を検討した。対象には肺、脳、リンパ節などの迅速診断用に提出された6例の凍結組織を用い、1例あたり3種類の抗体を用いⅠ,用手法Ⅱ,R-IHC一次抗体用手法濃度Ⅲ,R-IHC一次抗体通常濃度の3通り計9条件について検討した。
② R-IHCを用いての皮膚や腎の生検を用いた蛍光染色の染色性について従来法との比較を行った。検討には当院にて検査が行われた皮膚および腎の計10例を用いた。
③ 細胞診標本にも応用できるか、当院にて手術が行われた30例の非小細胞肺癌の捺印細胞標本を用いて組織型鑑別が可能か検討した
結果および考察
① 3つの条件のうちTTF-1、KI-67、サイトケラチンなどの抗体では条件②が最適な染色結果となった。総合的にⅡ>Ⅰ>Ⅲの判定結果の抗体が多かった(現在当院では加熱賦活処理を併用し、通常濃度で染色しているが・・・)。また、用手法に比べR-IHCでは発色の局在が明瞭で、染色のレベルの高い標本が作製できた。
② 蛍光染色では日常検査で行われている従来法の染色結果とR-IHCでの染色結果は全く同等の染色結果となった。
③ 非小細胞肺癌の捺印細胞標本を用いた検討の結果、19例すべての腺癌でTTF-1陽性CK5陰性であり、9例の扁平上皮癌ではTTF-1陰性、CK5陽性、2例の大細胞癌はTTF-1陰性、CK5陰性と高精度に組織型鑑別ができることがわかった。
結語
病理検査では今後ますます術中迅速組織診断に免疫染色を併用することが予想され、R-IHCはその使用により高品質な免疫染色ができ、客観的診断に大いに役立つと思われた。また、R-IHCは迅速組織診免疫染色に限らず様々な検査を迅速化できるためその応用範囲は広く将来性の高いデバイスであると考えられた。


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